結婚相談所というシステムを利用してやる。 そう意気込んで入会した私を待っていたのは、信じられないほど「ズレた」カウンセラーとの出会いだった。
入会して数ヶ月が経った、ある日の面談でのこと。 そのカウンセラーは、親密感を演出したかったのか、声を潜めてこう言ってきた。
「ここだけの話なんですけどね……」
身を乗り出して聞いた私に、彼女がドヤ顔で放った言葉は、私の耳を疑うものだった。
「実は私自身も、この結婚相談所に登録して、無事にお相手が見つかって成婚退会までしたんですよ。でもね、結局その人とは結婚しなくて。元彼と結婚したんです(笑)」
……は?
私は一瞬、頭の中の処理が追いつかなかった。 仕事の現場でこんなロジック破綻した報告を受けたら、その場で即、説教案件である。
何が「ここだけの話」だ。ふざけるな。 こっちは安くないお金を払い、年齢というタイムリミットを背負い、我が子に会うために人生を賭けてここに座っているのだ。相談所のシステムを信じて活動しようとしている会員の前で、「システムでマッチングした男を捨てて、元彼とよりを戻しました」という個人の裏切りエピソードを、一体どういう面下げてアドバイスとして語っているのか。
あんたが一番、カウンセラーになってはいけない人やないか。 プロ意識の欠片もないその言葉に、私は強烈な眩暈を覚えた。
――と、当時はブチギレたのだが。 人間、一面だけを見て判断してはいけない。このアドバイザー、ぶっちゃけ世間話は1ミリも役に立たなかったが、実務の「戦術」に関しては間違いなくプロだった。
「プロフィール写真は、絶対に屋外で撮りましょう」
彼女のそのアドバイスは、今振り返っても大正解だった。 いや、こっちはモデルでも何でもない一般人である。平日の昼間に外に出て、プロのカメラマンにポーズを指定されて写真を撮られるなんて、なんの罰ゲームだよと内心白目を剥いていた。
だが、仕上がった写真を見て驚いた。外の自然光の破壊力は凄まじい。肌の透明感も雰囲気も、スタジオのストロボとは比べ物にならないくらい、何倍増しにも良く見えたのだ。
「こんな写真で実物以上に美人と勘違いされて、いざ会った時にガッカリされたら嫌なんですけど……」 引き気味の私に、彼女は真顔で言った。
「申し込まれなきゃ、何も始まらないですから」
確かに。ぐうの音も出ない正論だった。まずは打席に立たなければ、ヒットもホームランもない。会ってみて、そこで話が合うかもしれないのだから、入り口のフックは強ければ強いほどいい。ビジネスのマーケティングと同じだ。この瞬間ばかりは「あ、この人が担当で良かったかも」と見直した。
さらに彼女のプロ根性を見せつけられたのは、ここからだ。 いざ活動が始まると、私は貴重な休みをフルに使い、1日に3人の男性とお見合いをこなすという怒涛のスケジュールを組んだ。正直、めちゃくちゃキツい。しかし彼女は、その過酷な私の休日の3連発お見合いに、かなりの頻度でわざわざ立ち合いに来てくれたのだ。
ただの綺麗事の相談所かと思いきや、実は現場主義でめちゃくちゃ泥臭く伴走してくれる人だった。
……ただ、たまに会話の最中、目が一切笑っていない瞬間があるのだけは、本気で怖かったけれど。
こうして、ホラーで有能なカウンセラーと共に、私の5年間に及ぶ「婚活砂漠」のゲートが正式に開いた。 最初に現れたのは、プロフィール写真とは似ても似つかない「奇妙な男たち」だった。

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