【第3話】お見合い3連発。ハイスペ上司と、家政婦を雇いたいオレオレ男

屋外で撮影した「奇跡の一枚」のマーケティング効果は絶大だった。 アドバイザーの「申し込まれなきゃ始まらない」という言葉通り、私のプロフィールには、普段の生活では絶対に出会えないようなハイスペックな男性たちからの申し込みが届くようになった。

ターゲットを「顔が良い人」「年収が高い人」「普段会えない職業の人」に絞り、私は貴重な休日をフルに使った「1日3連発お見合い」という超過酷な打席に立つことにした。

1人目:年収3000万の「頼れる上司」

トップバッターは、なんと「年収3000万円」の男性。 驚いたのは、彼が私に会うために、わざわざ 100キロ以上も離れた遠方からお見合い場所まで足を運んでくれたことだ。実際に会ってみると、さすがに経済的な基盤があるせいか、佇まいには大人の余裕が満ち溢れていた。

ただ、会話を進めるうちに、私の中の「ビジネス脳」が妙な違和感を察知し始める。 彼のライフスタイルは、仕事とゴルフの往復で完全に完成されていた。無駄がなく、隙がない。そして何より、彼と話している時間が、どうしても「会社の頼れる上司と面談している」ような感覚になってしまうのだ。

条件は文句なし。人間としても、遠方からわざわざ来てくれるほど誠実で、本当に良い人だった。 だけど、お見合いが終わった後、ドッと押し寄せた疲労感の中で私は冷徹に現実を計算していた。平日は管理職としてエネルギーを使い果たしている。その上で、休日にこの「100キロの距離」を乗り越えて、上司のような彼と関係を築いていく気力が、今の私にあるだろうか?

「……ない。今の私には、その元気はない」 わざわざ遠くから来てくれた彼には本当に申し訳なかったが、涙をのんで「不成立」のボタンを押した。婚活は、条件のマッチングだけでは進まない。お互いの「生活のリアル」が噛み合わなければ、スタートラインにすら立てないのだ。

2人目:バツ2・子ども5人の「支配型オレオレ男」

身を以て現実を知った私は、息つく暇もなく2人目の打席へと向かった。 次に現れたのは、これまた別のベクトルでエネルギーが限界突破している猛者だった。

条件は「バツ2、子ども5人」。 もちろん経済的な余裕はたっぷりあるタイプだった。本人はジェントルマンを装って、最初こそ必死に丁寧な自分を取り繕っていたが、会話の端々から「常に自分が主導権を握りたい」という透けて見える考えが滲み出ていた。何しろ、彼の口癖は「いいよ」や「いいですよ」なのだ。

極め付けは、今後の生活についての話になった時、彼がドヤ顔で放ったこの一言だ。

「まあ、家事などは、僕が家政婦を雇ってもいいし」

……はあ? 一瞬、頭の中に巨大なハテナが浮かんだ。

「家政婦を雇えるなんて素敵!」と一瞬だけ頭をよぎったのは事実だ。だけど、その提案の前提にあるロジックが、私は猛烈に嫌いだった。 「家事は当然、女(お前)がやるべき仕事だけど、俺の金で外部委託して免除してやってもいいよ」という、圧倒的な上から目線。

さらに彼は、これまたスマートなつもりでこう言った。 「デザートも頼んでいいですよ」

太っ腹……なのか?(笑) その瞬間、私の頭の中では「つい素敵!となりそうな自分」と「なんやねんそれ!と突っ込む自分」が激しくデッドヒートを起こしていた。

何から何まで、俺が許可してあげるよ、という謎の支配欲。 何が家政婦だ、何がデザートだ、ふざけるな。私はあなたに雇われる従業員になるためにここに来たんじゃない。バツ2で子ども5人という時点で突っ込みどころ満載なのに、その傲慢な思考回路に完全に白目を剥いた。

どんなにお金があっても、この男の支配下に入るのだけは御免被る。2人目も秒速で「不成立」が確定した。

経済力はあるけれど、自分の生活が完成しすぎていて距離を越えられない男。 経済力はあるけれど、古い価値観でこちらを支配しようとしてくる男。

「ハイスペック」という華やかな肩書きの裏にある、一筋縄ではいかない現実の砂漠。ぐったりと疲弊した私を、最後の3人目のお見合いが待ち受けていた。そこには、これまでの2人とは全く違う、別の意味で「忘れられない衝撃」が待っていたのである――。

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