スケジュール表が週末の予定で埋め尽くされていく、「狂乱の3ヶ月」。 私は「条件ばかりに囚われていてはいけない」「まずは多くの人に会ってみよう」と、自分自身に言い聞かせながら、相談所から届く申し込みをロジカルにさばき続けていた。
そんな中で出会ったのが、隣の県で工場勤務をしている男性だった。 これまでの年収3000万やドクターといった華やかなハイスペック路線とは、明らかに毛色の違うお相手。 「これこそが、食わず嫌いしていた出会いのチャンスかもしれない」
そう思い、私は指定されたホテルのラウンジへと向かった。
だが、彼と対面し、言葉を交わした瞬間。 私の脳内で、これまでで一番大きな警報が鳴り響いた。
彼と話している間、どうにも違和感が拭えない。 ……彼の「目」が、一切笑っていないのだ。
表情は笑っているように見えるのに、瞳だけがこちらをじっと見つめていて、少しも動かない。まるで何かを品定めされているような、あるいは、こちらの隙をずっと監視されているような不気味な圧力を感じた。
会話の内容は、驚くほど頭に入ってこない。 ただひたすらに、「じーーーっと」こちらを見つめ続けられる。その視線が皮膚の上を這い回るような感覚に、本能的な恐怖がジワジワと這い上がってきた。
「早くこの時間が終わってほしい」
私は引きつる笑顔を必死にキープしながら、心の中で何度もそう祈っていた。 カウンセラーの「目が笑っていない瞬間」は、プロとしての凄みとして受け入れられた。けれど、初対面の男性から向けられるこの視線は、ただただ純粋なホラーでしかなかった。
遠路はるばる「隣の県」から来てくれたという申し訳なさはあったけれど、私の直感は全力で「NO」を突きつけていた。生理的な恐怖には、どんなロジックも通用しない。
お見合い終了後、ほうほうの体で帰路につき、私は迷うことなく相談所のシステムで「不成立」のボタンを押した。
「条件を広げる」ということは、こうしたリスクとも隣り合わせなのだ。 スケジュール調整の忙しさで麻痺していた私の脳は、この強烈な体験によって強制的に目を覚まさせられることになった。
婚活の砂漠には、オアシスだけでなく、足を取られる沼も隠されている。 私は痛感した。私の直感は、時にスペック以上に正しいということを。

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