1日3連発お見合い、そのラストを飾るのは、ある「ドクター」だった。 前の2人があまりに強烈だったため、私は最後の気力を振り絞ってホテルのラウンジに向かった。
現れた彼は非常に聡明で、独特の知性を放つ人だった。 驚いたのは、彼の婚活への向き合い方だ。彼はなんと、相談所に登録されている約1万人分の自己PR文をすべて熟読し、独自に研究・分析したというのだ。
「頭の良い人は、やることが違う……」 管理職としてデータとロジックを重んじる私は、その徹底したアナリストぶりに思わず感服してしまった。
彼が私に申し込んできた理由もまた、非常に興味深いものだった。 「あなたのPR文、内容が完全に『経営者』の視点なんですよね。それなのに肩書きは会社員。そのギャップが不思議で、ぜひ一度話してみたいと思ったんです」
私の文章から滲み出る仕事へのスタンスやロジックを見抜き、そこに知的な好奇心を持ってくれた。これまでの、言葉の端々に「俺の許可」を求めてくる男性たちとは違い、対等な知性で会話ができる。その点において、私は彼に強い尊敬の念を抱いた。
だからこそ、私たちは「仮交際」へと進み、2回目のデートまで重ねることになったのだが――。 そこで、どうしても超えられない壁にぶつかった。
それは、「パーソナルスペース」のバグである。
彼はとにかく、物理的な距離感が近かった。 決して下心があるような嫌な近さではない。ただ、一緒に並んで歩いている時に、何度も何度も肩がぶつかるのだ。
私は、自分のパーソナルスペースを大切にするタイプだ。 どれだけ話が面白くても、どれだけ知性を尊敬できても、歩くたびに体が接触するその距離感のなさに、私の本能が「NO」のアラームを鳴らし続けた。
仕事のプロジェクトなら、ロジックで折り合いをつけられる。 けれど、結婚という生活を共にする関係において、この「生理的な違和感」は、努力や理詰めで解消できるものではなかった。
「素晴らしい人だけど、この人と並んで歩き続ける未来は想像できない」 結局、2回目のデートを終えたところで、私はお断りの連絡を入れた。
こうして、私の記念すべき「1日3連発お見合い」は、見事なまでの収穫ゼロで幕を閉じた。 疲弊しきって帰る電車の窓に映る自分の顔を見ながら、私は押し寄せる暗い感情と戦っていた。
婚活をスタートした時点で、私の頭の中には具体的な「妊活・不妊治療」のスケジュールが厳然として存在していた。 いや、厳然と存在していたからこそ、普段はあえて「考えないように」心の奥底に厚い蓋をしていたのだ。そうでもしなければ、焦りで足がすくんでしまうから。
けれど、容赦なくその時はやってくる。 1年が経ち、また1つ誕生日を迎えるたびに、砂時計の砂がサラサラと音を立てて落ちていくような恐怖が足元から這い上がってくる。 周りの友人が結婚し、新しい命が生まれたという報告を聞くたびに、「一刻も早くお相手を見つけて、治療に入らなきゃいけないのに……」という焦燥感が、鋭い刃のように胸を刺した。
仕事では管理職として順調にキャリアを重ね、いくらでもロジックで問題を解決できるのに。 なぜ、人生で一番手に入れたい「我が子に会うための切符」だけは、こんなにも遠いのだろう。
3000万の上司、家政婦オレオレ男、データ分析医。 彼らとの出会いは、華やかなハイスペ婚活のエンタメなどではない。私にとっては、文字通りタイムリミットと戦う「命がけの打席」の、ほんの最初の3回に過ぎなかったのだ。
胸の奥の焦りを必死に宥めながら、私はまた、明日の仕事へ、そして次なる打席へと向かう準備を始める。 大手の砂漠での戦いは、まだ始まったばかりだった。

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