平日は管理職としての激務、週末はしっくりこない男性たちの「無給の接客業」に追われ、私の心は完全にゲシュタルト崩壊を起こしかけていた。 「もう、誰に会っても同じなんじゃないか……」と、諦めに似た境地に達していた、そんな時だった。
突如として、私の前に「癒し系5歳年下くん」が現れた。
彼はごく普通の会社員男性。 これまでの年収3000万やドクターといった、ギラギラしたハイスペック路線のマネーモンスターたちとは明らかに違っていた。 何より、お話していて全く苦痛じゃないのだ。仕事のプレゼンのように気を張る必要もない。ただただ、一緒にいるだけで心がじんわりと「癒される」という、婚活を始めてから初めての感覚を味わっていた。
「この人なら、もう一度会ってみたい」
前回の「頑張って大人の対応をしたのに、なぜか相手からバッサリ断られる」という理不尽なトラウマが頭をよぎったけれど、勇気を出してシステムから「仮交際希望」を出してみた。
結果は、無事にOK。 初めての仮交際成立に、「私の直感、今回は間違っていなかったんだ」と、すり減っていた自信が少しだけ回復していくのを感じた。
そして、いよいよ初めてのデートの計画を立てる段階になり、彼からある提案をされた。
「次のデートなんですけど、僕、車を持っていないので、レンタカーを借りてドライブに行きませんか?」
車は持っていない、だからレンタカー。 そのメッセージを見た瞬間、私の脳内には一瞬、小さな衝撃が走った。
地方都市での生活や、これまでの私の感覚からすると、「大人の男性とのドライブデート=相手のマイカー(あるいはスマートなエスコート)」という固定観念がどうしても心のどこかにあったからだ。
「ほぉ……! これが今どき(令和)のスタンダードなのか!」
「男たるもの車くらい……」なんていうのは、おばさんくさい昭和・平成の遺物なのだと自分を笑いつつも、なんだかもの凄く新鮮なカルチャーショックだった。 見栄を張らずに「レンタカーで行きませんか?」とサラと言えてしまう彼のフラットさが、むしろ潔くて心地いい。
世間の婚活マニュアルが推奨する「完璧なエスコート」ではないけれど、背伸びをしない彼との時間は、私にとって本物の「デート」の始まりを予感させていた。
(第9話へ続く)

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